
今週の【アーカイブ】は高速バス。2015年集計なので最新とはいえませんけれど、国土交通省の第6回「全国幹線旅客純流動調査」によると、東京~大阪間(約550㎞)に相当する500~700㎞移動の場合、交通機関別シェアは航空12%、鉄道64%、幹線バス4%、マイカー19%(残りはフェリーなど)で、100人のうち4人前後が高速バスを使う計算です。
皆さまは旅行の際、どんな交通手段をお使いでしょうか。自動車業界誌の読者ですから、おそらく自動車でしょうね。
都市間の移動では、300~400㎞くらいまでは自動車、それ以上は鉄道、東京から北海道や九州のような長距離は航空機と区分されています。
そんな決まった市場に割って入ろうというのが高速バスです。
告白すれば私も結構、高速バスを利用します。便利なのは、目的地に朝着いて終日フルに使える点。中距離以上の高速バスのほとんどは夜行で、JRのブルートレインが全滅したのも夜行バスにお客を奪われたから。
運賃は今(2016年)、インターネットで検索したら、東京~大阪間片道2200円というのもありました。
新幹線「のぞみ」の1万4450円(通常期・指定席。現在は1万4520円)に比べ1万2000円も安い。これなら「多少疲れても高速バスで行こう」と考える人が現れるのは当然です。
全席個室で女性も安心・安眠
ところが、〝安かろう、○○かろう〟に反旗をひるがえす超豪華バスが、先月(2017年1月)登場しました。
岡山市に本社を置く両備ホールディングスと東京の関東バスが、池袋~なんば間にデビューさせた新型バス「ドリームスリーパー」は何と11人乗り(ドライバーを含まない乗客数です)。全室が個室という点が何より型破りです。

高速バスの個室は実は初めてでなく、両備グループの中国バスが2012年から横浜~広島線に投入していました。このバスは一部が個室、ほとんどは普通シートでした。
中国バスは当初、出張のビジネスマンに利用してもらおうと考えたそうですが、ふたを開けてみれば個室の乗客のほとんどが女性でした。
寝顔を見られたくないと考える女性は少なくないようで、バスのホームページ運営会社の調査では、高速夜行バスに欲しい設備のトップが「仕切りカーテン」でした。
そこで両備がハタと思い付いたかどうかは分かりませんが、全席個室のバスを製作しようと考えたそうです。
無重力シートで夢の世界へ
運行開始を前に、JR中野駅前で内覧会が開かれたので行ってきました。
外觀はご覧のように、普通のバスと変わりません。ところが、車内に入ると様子は一変、真ん中の通路の両側に扉が並んでいて、一つ一つが個室になっています。車内は全面カーペット敷きで靴を脱いで乗車します。

扉を開けると、あるのは当たり前ですがシート。名前はゼログラビティーシートで、何のことか辞書で調べたら「無重力シート」の意味なんですね。
まさに無重力の宇宙のような寝心地(といわれても経験がないのでピンときませんが)。全電動リクライニングで、胸と足の高さが水平になるまで背もたれを倒せます。
個室内は癒やし・安眠効果のある桜色LED照明にオリジナルBGMが流れ、傍らにはイオン発生器……。とにかくすごい。
温水洗浄や水浄化機能を備えたトイレ、独立型パウダールームは女性客を意識しました。ビジネスマン向けにはパソコン電源や無料インターネット接続環境を備えます。
運賃は新幹線プラス5000円
びっくりするのは運賃です。
東京~大阪間片道2万円。本当の運賃は9000円ですが、片道1万1000円の座席料金が加算されます。
2万円を高いとみるか、ホテル並みの設備に比べれば安いとみるかが、このバスが利用されるかどうかの分岐点でしょう。
私なら「新幹線で行って5000円のビジネスホテルに泊まった方が……」と思いますが、強みは11人という定員。「安い」と思う人が11人いれば、バスは〝満員御礼〟になってしまうんですね。
さて、残りのスペースで高速バスの安全対策を紹介しましょう。
昨年(2016年)1月に発生した長野県軽井沢でのバス事故。国交省は有識者の検討委員会で安全対策を考え、順次実行に移します。
一つ紹介すれば、ドライブレコーダーは今年12月1日から新車全車への導入を義務化、次いで2019年12月1日には、現在運行中のバスも設置しなければ走行できなくなるそうです。
2026年9月追記 本ブログのように華々しくデビューした「ドリームスリーパー」、運行開始後は紆余曲折がありました。
当初は話題性もあって乗車率は順調だったのですが、2020年の新型コロナ禍で同年4月~2021年11月に長期運休。両備は2022年に撤退し、代わって奈良交通が参加しました。
現在は「ドリームスリーパー東京・大阪奈良号」として東京~大阪~奈良間を結びます。運賃・料金は1万8000円~2万2000円で、スタート時とほぼ同水準です。
バス業界全般ではドライバー不足が深刻。燃料費高騰で運賃も上昇傾向で、「高速バスは鉄道に比べ割安」のイメージは崩れつつあります。

コメント