
今週の【アーカイブ】は自動車の自動運転を取り上げます。「北海道新幹線 間もなく出発進行!!」、「東日本大震災 発生から5年」と同じく自動車業界団体の会報に寄稿したコラムをリライトしました。
執筆は10年前の2016年で、あらためて読み返せば「知財立国」などほとんど聞けなくなった言葉はあるものの、情勢は大きく変わらないようにも思えます。データなどは執筆時点のものをそのまま再掲しています。
私は普段、国土交通記者会(国土交通省の記者クラブ)に常駐して記事を書いたり取材に出掛けるのですが、提供されるニュースを見ていると世の中の流れがよく分かります。
自動車関係で目に付くのは自動運転でしょうか。テレビを見ていても、「最近の自動車メーカーのCMは自動ブレーキのPRばっかり」と思うのは私だけ?
もちろん自動車の安全性が高まるのは、非常にいいことですが……。今回はちょっと立ち止まって自動運転を考えてみました。
目指すは「知財立国」
最初になぜ自動運転が必要なのか? 「交通事故防止のため」。もちろん正解ですが、もう少し深い意味もありそうです。
自動運転は各国が技術開発を競っています。仮に日本が各国に先駆けて実用化できれば、日本の技術が世界に広がる可能性を持ちます。
そう、かつて日本車がその名を世界にとどろかせたように、再び「メイド・イン・ジャパン」が世界の頂点に立つのです。
「知財立国」の言葉を、お聞きになったことがあるでしょうか。知財とは、簡単に言えば特許などのこと。かつての日本は「ものづくり立国」、「技術立国」だったわけですが、新興国の追い上げで今や風前の灯かも。
そこで、技術の進化形といえる知財で世界の先頭に立とうということなのです。 自動運転技術で世界をリードするのに必要なのが、日本生まれの技術を国際標準化すること。
皆さんご存じの「JIS」は日本工業規格のことで、釈迦に説法かもしれませんが、JISで規格が統一されているから違うメーカーの部品を組み合わせて自動車などの製品を造れるのです。
自動運転も同じで、日本が提唱した技術が国際規格になれば相当有利になるはず。
自動運転の国際規格を話し合うのは、ISO(国際標準化機構)の「ISO/TC204」という委員会。委員会を主導するのは自動車王国・アメリカで、TC204全体の議長国を務めます。TCは分野別に12のワーキンググルーブ(作業部会)で構成。日本はITSデータベース技術と走行制御の両部会の議長国です。
現在は「レベル2」のスタートライン
自動運転の技術は4段階に分かれます。レベル1は「安全運転支援システム」で、既に実用化済み。カーナビが「間もなく踏切です」と教えてくれたりします。
レベル2とレベル3は「高度運転支援システム」で、2はハンドル、加減速、ブレーキといった運転の基本をシステム(機械)が人の代わりに受け持ちます。
現在は〝レベル2の入り口〟といったところ。3は2の進化形で、ドライバーは緊急時だけブレーキを踏んだり、ハンドルを操作すればOK。4は完全自動運転で、ドライバーは基本的に見ているだけです。

はてさて、ちょっと前に自動運転の事故責任は誰にあるのかが話題を呼びました。
今のところレベル1~3はドライバー、4はメーカーとされていますが、そうなると「車内で寝ていいのか」、果ては「車内で酒を飲んでもいいのか」と言い出す人が出てきます。
理論的に問題ないのかもしれませんが、常識で考えれば絶対アウト。高速でふと隣のクルマを見ると車内で酒盛り!? そんな光景は絶対に見たくありません。
かすれるカーナビで道を覚えよう
レベル4の実現はいつごろか? これも諸説ありますが、2040年ごろというのが大方の見方です。ではそうなった時、本当に道路を走るクルマが全部、自動運転に変わるのか。
私はそんなことはないと思います。運転が好き、運転が趣味という人は世の中にゴマンといます。ハンドルやブレーキにノータッチで目的地に着けても、それで本当に満足できるでしょうか。
などと考えていたら、自動運転時代のドライバー心理を研究している方がいることを知りました。

京都大学大学院情報学研究科の平岡敏洋助教は「人と機械の関係性」が専門。アスリートがつらい練習を乗り越えて記録を伸ばすように、ドライバーも自分で運転して目的地に到着してこそ本当の満足が得られるという論旨です。
平岡先生が思い付いた「かすれるカーナビ」。カーナビに頼ってばかりだとなかなか道は覚えられませんが、仮に通り過ぎるそばから画面がかすれて消えてしまうカーナビがあれば、人は自然と道を覚えようとするでしょう。
研究成果として平岡先生は、「自動運転で望ましいのはシステムが必要な情報を提供し、最終判断は人に任せる間接支援。手間ひま掛けるからこそ、ドライバーの技量も向上します。間接支援はドライバーに『機械にやられている』のやらされ感を発生させず、満足度も高いのです」と説きます。
2026年7月追記 平岡先生は今年7月筑波大学システム情報系教授に就任されたようです。かすれるカーナビの理論的根拠は、「不便益の益」。手間かけることで得られる益を表します。AI検索やAI要約は、ひょっとしたら不便益の益を奪っているのかもしれませんね。

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