
本ブログ快走中(実は迷走?)のシリーズ「乗ったで降りたで静岡清水線」。前週と今週は長沼駅です。駅に隣接して車両基地(長沼車庫)があること、前編でご報告しました。
10月14日の「鉄道の日」に合わせ、長沼車庫を公開するのが「しずてつ電車まつり2026」。10月17、18の両日、ミニSL乗車体験や鉄道模型運転会、ゲームなどで、鉄道ファンやファミリーが〝鉄分たっぷりの一日〟を過ごしました。
今週は【書き下ろし】2連チャンで長沼駅を取り上げます。電車まつりルポの本ブログは、2016年にデビューしたA3000形電車の実力を探ります。

J-TRECサスティナの静鉄バージョン
静岡清水線の全15駅。近代的なターミナルから、開業当時の面影を残す古風な駅まで各駅各様というのは、「乗ったで降りたで――」でルポする通りです。
現在の静鉄を走るのがA3000形電車。時代の最先端を走る鉄道車両であるのは、鉄道の専門家からファンまで誰もが認めるところです。
地方私鉄の静鉄が、なぜ先端車両を採用できたのか? 理由は元になるバージョンの車両があったからです。
コアな鉄ちゃんには説明不要かもしれないA3000形。JR東日本グループの総合車両製作所(J-TREC)が、2013年から鉄道各社向けに送り出す次世代ステンレス車両「sustina」シリーズの一員です。
最近の鉄道車両はほぼステンレス製かアルミ製の二択。日本で初めててのステンレス車、1958年に東急と国鉄に登場しました。その究極の進化形がサスティナです。
サステナブル+ティナ=サスティナ。ティナはローマ神話で女神を表す接尾語です。サスはステンレス鋼のJIS規格名のダブルミーニングです。
錆びずに長持ちのステンレス車。アルミ車に比べ重いのが課題でしたが、サスティナは車両構造の工夫や骨組みの軽量化でアルミ車並みに軽量化。走行時の消費電力量をカットして、省エネ性能を高めました。
難しい話はさておき、昔のステンレス車、ボディーに屋根のトタン板(波板)みたいなデコボコが付いていました。その点、サスティナはなめらかです。
ところで香川県の高松琴平電気鉄道(琴電)が今年、66年ぶりに導入した新型車両2000形。誰がどう見ても静鉄A3000形に似てますね。明石家さんまさんと原口あきまささんくらい似てます(不適切かもしれない例えで申しわけありません)。琴電もサスティナです。

立席の女の子から発想した曲線状スタンションポール
ここまでの話、鉄道趣味誌や鉄道系サイトに出ています。本ブログをご覧いただく皆さまのために、私の取材ノートや電車まつり会場で聞いた話をトリビアにしました。
A3000形に限らず最近の電車、金属製パイプで座席を仕切ります。業界用語ではスタンションポール。スタンションは支柱、ポールは柱。座席から伸びて網棚につながります。
注目はスタンションポールのスタイル。初期の電車は直線状でしたが、最近は円形に膨らんでいます。形状の進化はほんの偶然がきっかけです。

ある日、J-TRECの車両デザイナーが電車に乗車していると、立っていた小学生ぐらいの女の子がポールにつかまろうとしていました。しかし、手を伸ばさないと届かない。そこで考え出したのが子どもでもつかまりやすいポールです。
改良タイプは、JR東日本が2006年度から中央線快速に導入したE233系電車で本格採用。A3000形を含め他社にも広がりました。
続けてもう一題。電車まつりで長沼車庫を探索していたら、A3000形の台車がストックしてあるのに気付きました。

「まだ部品交換にはちょっと早いし」と思って社員の方にうかがうと、万一のトラブル時に備えて予備品を確保してあるとのこと。部品不足で車両が長期離脱になれば、ダイヤに影響が出る恐れもあります。〝備えあれば憂いなし〟ですね。
さらにおまけの一題。A3000形の屋根上に付いているL形の突起は何? 答えは予想通り、無線アンテナでした。JR電車のアンテナは運転席屋根上の円形状突起が普通ですが、独自スタイルのアンテナに静鉄のアイデンティティーが感じられる……かもです。

引退後も働き続ける1000形
電車まつりでは展示されませんでしたけど、前週のブログ42でピックアップした1000形電車についても聞いてみました。1編成2両を残した理由は保存用でも他社への譲渡用でもなく、意外にも社員研修が目的でした。
最近は電車もクルマもメカの中心部がブラックボックス化され、鉄道の専門家でもよく分からない場面に遭遇します。ましてや新人ならなおさらのこと。AI時代に電車の基本を学ぶには昔の電車の方がベターなのかもしれません。
1973年デビューの1000形、それほど昔ではありませんが、新入社員が鉄道の基礎を知るには新鋭A3000形よりこちらなのでしょう。部品取りにも使えそうです。
1000形は静鉄では引退しましたが、熊本電気鉄道などの地方鉄道に譲渡され、今も現役です。譲渡先からの問い合わせに答えるには、やはり本物の電車をチェックするのが一番というわけです。
電車まつり会場では鉄道イベントの定番、Nゲージ鉄道模型の体験運転もありました。ここにも1000形電車。子どもたちが模型運転を体験した本物ライクの運転台、実は1000形の廃用品ということです。

半世紀以上前の1000形ですが、運転台は当時としては最新鋭のワンハンドルタイプ。両手で押し込めば列車が加速し、手前に引けば減速する。昔の電車は加速と減速レバーが別のツーハンドルタイプでしたが、今はワンハンドルがほとんど。
ワンハンドルのメリット、右利き、左利きにかかわらず使いやすい点で、A3000形ももちろんワンハンドです。

電車まつりルポは以上。「乗ったで降りたで――」もぜひ続けてご覧ください。

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