ブログ28 【書き下ろし】  映像と音で体験するアンビエントな世界 故坂本龍一さんの環境音楽をマルチアーティスト・高谷史郎さんのビジュで堪能(2026年9月期)

書き下ろし
タイトルカット 今年7月の第73回「安倍川花火大会」(会場から2㎞ほど離れた自宅ベランダで撮影)

今週も1本目は8月末の東京紀行で取材したニュースコラム。東京都港区の麻布台ヒルズギャラリーで8月28日から始まった、展覧会(?)「坂本龍一+高谷史郎アンビエント京都トゥ東京」に行ってきました。

2023年に旅立たれた坂本さん(ニックネームはもちろん「教授」ですね)、1970年代末にYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)で一躍時代の最先端に。1980年代は映画「戦場のメリークリスマス」への出演と印象的なテーマ曲で活動の場を広げ、1988年に「ラストエンペラー」でアカデミー賞作曲賞を受賞しました。

そんな坂本さん、晩年に取り組んだのが環境音楽で、その心は「旋律やリズムよりも、音色や雰囲気、空間との調和を重視する音楽」。私なりにかみ砕けば、「めい想のバックミュージック」で当たらずとも遠からずのような……。

坂本さんの環境音楽をBGMに映像が流れる 

本展は「RYUICHI SAKAMOTO+SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO-TOKYO」とローマ字表記ですが、本ブログは片かな+漢字で。「アンビエント京都」と略させていただきます。アンビエントは空間や環境を意味します。

テニスコートを一回り小さくしたギャラリーには、横長のスクリーン1面があるだけ。複数のソファーが置かれ座って鑑賞できます

正統派のニュースは音楽系、美術系メディアに掲載済み。自己流でお恥ずかしい限りですが、ポイントを読み解きました。

プレスリリースには、「音とアート、そして空間により構成される展覧会」。私はあえて「展覧会」に疑問符を付けました。

確かに芸術に触れる点では、展覧会かもしれませんが、絵画や彫刻を鑑賞する一般的な芸術展とはまるで違います。

突き詰めれば、「坂本さんの音楽をバックにした映像展」でしょうか。音楽鑑賞を主に考えれば、「坂本さんの音楽から発想を広げるフィルムコンサート」かもしれません(と書いたものの、「ちょっと違うかな?」というのが本心です)。

スクリーンは幅26.4m。坂本さんのスタジオや愛器のピアノ、さらにアイルランドやモロッコなどの映像が、めまぐるしく移り変わりながら次々に映し出されます。

バックに流れるのは、坂本さんが2017年に発表したアルバム「asyncアシンク」です。

アシンクはコンピューターのプログラミングで「非同期」を意味する、いかにも教授ライクな学術用語。音が微妙にズレながら展開する、これといったメロディーやハーモニーのない音の流れを表します(あくまで私の解釈なので、発想がずれていたら申しわけありません〈これぞアシンクブログ?〉)。

アンビエント京都の初開催は2023年。ネットには、「入場料3300円もするけど、飲み会1回我慢すればと自己暗示かけて会場へ」の何ともユーモラスで現実的な鑑賞記も。視覚+聴覚に訴える展覧会は、大きな話題になりました。

今回の入場料は2500円(平日。土・日曜日と祝日は2800円)。物価高騰の昨今、飲み会我慢は2分の1回で済みそうですね。

札幌国際芸術祭プロモーションでお目にかかった坂本さん 

ここから私的思い出も交えたお2人のプロフィール。

私の坂本さん(ご本名に戻ります)レコード初聴きは、1980年発表の「B-2ユニット」。YMO休止期に発表されたこのアルバム、レゲエのダブやノイズミュージックの手法を取り入れ、音楽誌でも高評価されました。

一度聞いただけではよく分からない、何回も聴きたくなる。坂本さんの音楽の本質、このころから大きく変わっていないように思えます。

ご本人に一度だけお会いしたことがあります。2014年に開かれた「札幌国際芸術祭」。坂本さんはゲストディレクターとして、北海道の空の玄関・新千歳空港で流す音楽を作曲しました。しかし、病気治療のため予定されたイベントは中止。その後、回復してasyncを発表しました。

高谷さんは京都市立芸術大学卒。1984年アーティストグループ「ダムタイプ」に創設メンバーとして参加しました。ダムタイプのパフォーマンスやインスタレーションの創作に携わり、映像、照明、グラフィック・デザイン、舞台装置デザインなどを手掛けます。

内覧会でインタビューに答える高谷さん。「決まった鑑賞法はないので、自由に没入体験してほしい」と思いを語りました

インスタレーションとは、空間全体を一つの作品に仕立て、鑑賞者がその場に入り込んで体験する現代美術の表現手法。パンフレットには、「楽曲、映像、音響、空間、そしてあなたが一つになる、一度限りの没入体験」とあります。 

高谷さんが率いるダムタイプ、英語のダム(言語能力を失った、無口な=Dumb)+タイプをあわせた造語。「階層嫌い、科学思考嫌い」(分かるような分からないような)から発想したそうです。

開幕前日の内覧会でのあいさつては、今回は2023年版を映像2時間弱、音楽1時間弱に再編集。音楽が「非同期アシンク」なので、映像と音のシンクロは全くなく、「自由に鑑賞してほしい」と思いを語りました。

会場は日本一のノッポビルが建つ東京の新しいまち

麻布台ヒルズは東京都港区麻布台、虎ノ門、六本木が交わるエリア約8万1000㎡を総合開発。2023年11月にまちびらきを迎えました。シンボルの麻布台ヒルズ森JPタワーは地上64階建て、高さ約325m。日本一の高層ビルです

催しの主催は、前ブログの鉄道模型「JAM亅と同じ実行委員会方式で、メンバーの一社が東京と京都に本社を置くTrafficトラフィック(企業名)。

中村周市社長は、大手レコード会社で洋楽プロモーションを担当した後に独立。現在は社名と同じ Trafficレーベルを運営するほか、今回のような音楽・芸術イベントを企画します。

ネット検索で分かったのですが、所属するのはNew Orderニュー・オーダーA Certain Ratioア・サートゥン・レシオといった、〝イギリスロックの深い森(音楽評論家の和久井光司さんが発想した英国ロックの比喩的表現)〟に暮らすアーチスト。私好みのバンドも多く、「もうちょっと話を聞けば良かった」と後悔しきりです。

本ブログでは、世界で静かなブームを呼ぶ日本発環境音楽の話題も書こうと思ったのですが、スペースが尽きたので次の機会に。アンビエント京都は2026年10月25日まで無休開催中。詳細はホームページをご覧ください。

最後に、今回は今年5月の静岡移住後、初めての〝上京〟。JAMとアンビエント京都の取材2件のほか、秋葉原散策などで過ごしました。道中では、東京の朝通勤ラッシュを久々に体験。「モームリ」でした→率直な感想です。

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