
今週も1本目は8月末の東京紀行で取材したニュースコラム。東京都港区の麻布台ヒルズギャラリーで8月28日から始まった、展覧会(?)「坂本龍一+高谷史郎アンビエント京都トゥ東京」に行ってきました。
2023年に旅立たれた坂本さん(ニックネームはもちろん「教授」ですね)、1970年代末にYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)で一躍時代の最先端に。1980年代は映画「戦場のメリークリスマス」への出演と印象的なテーマ曲で活動の場を広げ、1988年に「ラストエンペラー」でアカデミー賞作曲賞を受賞しました。
そんな坂本さん、晩年に取り組んだのが環境音楽で、その心は「旋律やリズムよりも、音色や雰囲気、空間との調和を重視する音楽」。私なりにかみ砕けば、「めい想のバックミュージック」で当たらずとも遠からずのような……。
坂本さんの環境音楽をBGMに映像が流れる
本展は「RYUICHI SAKAMOTO+SHIRO TAKATANI AMBIENT KYOTO-TOKYO」とローマ字表記ですが、本ブログは片かな+漢字で。「アンビエント京都」と略させていただきます。アンビエントは空間や環境を意味します。

正統派のニュースは音楽系、美術系メディアに掲載済み。自己流でお恥ずかしい限りですが、ポイントを読み解きました。
プレスリリースには、「音とアート、そして空間により構成される展覧会」。私はあえて「展覧会」に疑問符を付けました。
確かに芸術に触れる点では、展覧会かもしれませんが、絵画や彫刻を鑑賞する一般的な芸術展とはまるで違います。
突き詰めれば、「坂本さんの音楽をバックにした映像展」でしょうか。音楽鑑賞を主に考えれば、「坂本さんの音楽から発想を広げるフィルムコンサート」かもしれません(と書いたものの、「ちょっと違うかな?」というのが本心です)。
スクリーンは幅26.4m。坂本さんのスタジオや愛器のピアノ、さらにアイルランドやモロッコなどの映像が、めまぐるしく移り変わりながら次々に映し出されます。
バックに流れるのは、坂本さんが2017年に発表したアルバム「async」です。
アシンクはコンピューターのプログラミングで「非同期」を意味する、いかにも教授ライクな学術用語。音が微妙にズレながら展開する、これといったメロディーやハーモニーのない音の流れを表します(あくまで私の解釈なので、発想がずれていたら申しわけありません〈これぞアシンクブログ?〉)。
アンビエント京都の初開催は2023年。ネットには、「入場料3300円もするけど、飲み会1回我慢すればと自己暗示かけて会場へ」の何ともユーモラスで現実的な鑑賞記も。視覚+聴覚に訴える展覧会は、大きな話題になりました。
今回の入場料は2500円(平日。土・日曜日と祝日は2800円)。物価高騰の昨今、飲み会我慢は2分の1回で済みそうですね。
札幌国際芸術祭プロモーションでお目にかかった坂本さん
ここから私的思い出も交えたお2人のプロフィール。
私の坂本さん(ご本名に戻ります)レコード初聴きは、1980年発表の「B-2ユニット」。YMO休止期に発表されたこのアルバム、レゲエのダブやノイズミュージックの手法を取り入れ、音楽誌でも高評価されました。
一度聞いただけではよく分からない、何回も聴きたくなる。坂本さんの音楽の本質、このころから大きく変わっていないように思えます。
ご本人に一度だけお会いしたことがあります。2014年に開かれた「札幌国際芸術祭」。坂本さんはゲストディレクターとして、北海道の空の玄関・新千歳空港で流す音楽を作曲しました。しかし、病気治療のため予定されたイベントは中止。その後、回復してasyncを発表しました。
高谷さんは京都市立芸術大学卒。1984年アーティストグループ「ダムタイプ」に創設メンバーとして参加しました。ダムタイプのパフォーマンスやインスタレーションの創作に携わり、映像、照明、グラフィック・デザイン、舞台装置デザインなどを手掛けます。

インスタレーションとは、空間全体を一つの作品に仕立て、鑑賞者がその場に入り込んで体験する現代美術の表現手法。パンフレットには、「楽曲、映像、音響、空間、そしてあなたが一つになる、一度限りの没入体験」とあります。
高谷さんが率いるダムタイプ、英語のダム(言語能力を失った、無口な=Dumb)+タイプをあわせた造語。「階層嫌い、科学思考嫌い」(分かるような分からないような)から発想したそうです。
開幕前日の内覧会でのあいさつては、今回は2023年版を映像2時間弱、音楽1時間弱に再編集。音楽が「非同期」なので、映像と音のシンクロは全くなく、「自由に鑑賞してほしい」と思いを語りました。
会場は日本一のノッポビルが建つ東京の新しいまち

催しの主催は、前ブログの鉄道模型「JAM亅と同じ実行委員会方式で、メンバーの一社が東京と京都に本社を置くTraffic(企業名)。
中村周市社長は、大手レコード会社で洋楽プロモーションを担当した後に独立。現在は社名と同じ Trafficレーベルを運営するほか、今回のような音楽・芸術イベントを企画します。
ネット検索で分かったのですが、所属するのはNew OrderやA Certain Ratioといった、〝イギリスロックの深い森(音楽評論家の和久井光司さんが発想した英国ロックの比喩的表現)〟に暮らすアーチスト。私好みのバンドも多く、「もうちょっと話を聞けば良かった」と後悔しきりです。
本ブログでは、世界で静かなブームを呼ぶ日本発環境音楽の話題も書こうと思ったのですが、スペースが尽きたので次の機会に。アンビエント京都は2026年10月25日まで無休開催中。詳細はホームページをご覧ください。
最後に、今回は今年5月の静岡移住後、初めての〝上京〟。JAMとアンビエント京都の取材2件のほか、秋葉原散策などで過ごしました。道中では、東京の朝通勤ラッシュを久々に体験。「モームリ」でした→率直な感想です。

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