
ブログ2本目はアーカイブ。雑誌の特集号には書き下ろしと一緒に、発表済み原稿が並んでたりしますが、本コラムもそんな感覚でご覧いただければ幸いです。書き下ろし、アーカイブともスペックは新聞の解説記事の定石とされる1回2000字強の読み切りにします。
本コラムは自動車業界団体の会報向けに2016年に書いたものですが、今まで1回も表に出たことはありません。役職や数字は原則として執筆時点のままとさせていただきます。
ところで初回執筆後、思い出したことがあります、かつてYouTuberの方を取材した際、印象に残ったのが次のセリフ。「大切なのは新聞や週刊誌のように、毎日または毎週定例日に新しい動画をアップすること」。この金言を教訓に、どこまで続くか分かりませんが、書き下ろしとアーカイブを合わせ、毎週1~3本程度のコラムを原則月曜日(ハッピーマンデーなどの場合は火曜日)公開で連載したいと思います。

40年来の悲願
北の大地にいよいよ新幹線が走ります。新青森~新函館北斗間(149㎞)の開業は2016年3月26日。東京~新函館北斗間の所要時間は最速4時間2分。北海道、特に函館市を中心とする道南エリアは大いに盛り上がっているようです。
そもそも北海道新幹線の整備計画がまとまったのは1973年のことです。今から42年前。何があったか調べてみたら、札幌冬季オリンピックで〝日の丸飛行隊〟がスキー・ジャンプ70m級で金銀銅メダルを独占。時の総理大臣は田中角栄さんで、日本全体が開発ブームに沸いていました。そういえば角栄さんには「日本列島改造論」の著書もありましたね。
自動車業界の新車はスズキ「GT800」(二輪車)、日産「ローレル」など。時代は高度経済成長一直線。日本経済が成長に向かう中で、北海道新幹線は計画されたのです。
開業までにはいろんな事がありました。オイルショックからバブル経済崩壊、最近では2009年の世界経済危機(リーマンショック)まで、日本はそうした難関を本当に乗り越えられたのかどうか。
国鉄もJRに変わり、そのJRも来年30周年を迎えます。モータリゼーションが進み、人口減少もあって地方では鉄道やバスの利用客が急減。公共交通機関が衰退する中で、公共交通のシンボルといえる新しい新幹線が開業するのです。日本人ってすごい?
青函トンネルを抜けて
新しい新幹線のアウトラインを紹介しておきましょう。新青森で路線名は東北新幹線から北海道新幹線に変わりますが、線路はつながっていて本州から北海道へ直通運転します。新駅は青森方から「奥津軽いまべつ」、「木古内」、「新函館北斗」。奥津軽いまべつ~木古内間で青函トンネルをくぐります。
列車は終点の新函館北斗基準で、速達の「はやぶさ」が東京まで10往復、仙台まで1往復、各駅停車タイプの「はやて」が盛岡と新青森まで各1往復。全体で1日13往復が走ります。
車両はJR北海道の新車がH5系。東北新幹線を走るJR東日本のE5系とともに北の大地を疾走します。H5系、E5系のいずれも列車は最高級のグランクラス、グリーン車各1両を含む10両編成。1列車の定員は731人です。
盛り上がりってるの? 北海道新幹線
新しい新幹線といえば、2015年3月に長野~金沢間が延伸開業した北陸新幹線が思い浮かびます。ある経済誌の同年のヒット商品番付で「北陸新幹線」は東の横綱にランキング(参考までに、西の横綱は「道の駅」)。金沢の観光名所・兼六園や金沢城公園は観光客数が前年の1.5倍くらいに増えました。
それに比べると、今回の北海道新幹線が今ひとつ盛り上がりに欠けるように思えるのは、私が東京(千葉)にいるせいでしょうか?
北陸新幹線と北海道新幹線の盛り上がりの違いには、金沢と新函館北斗という終点駅の知名度の違いが関係します。金沢といえば兼六園とか和倉温泉とか輪島の朝市とか、北陸の観光名所がすぐに思い浮かびます。でも「新函館北斗ってどこ?」というのが多くの人の率直な感想でしょう。
新函館北斗は、在来線のJR函館線渡島大野駅のこと。新幹線の終点が渡島大野では、ますます何がなんだか分からない。というのは渡島大野は普通列車だけが停車する小駅だからです。そこで新幹線開業に合わせ、近隣の大都市・函館(といっても函館と渡島大野は15㎞ぐらい離れていますが)と地元・北斗市の名前を合わせて新しい駅名としたのです。
こうしたところは北海道新幹線のネガティブ要因。ちょっと前に話題になったJR北海道のトラブル隠ぺいも、新幹線のマイナス要因になっているかしれません。地元や旅行業界も、そのへんは十分に承知しているようで、駅からの二次交通整備などに力を入れています。
新幹線開業と同時に、函館(正確には隣駅の五稜郭)から本州方面に向かう並行在来線のJR江差線(通称はJR津軽海峡線)は、第三セクターの道南いさりび鉄道に転換されます。こちらも観光列車「ながまれ号」で、観光客誘致を目指しています。ながまれは道南地方の方言で「ゆっくりして」、「のんびりして」だそうです。

2026年6月追記 北海道新幹線は本コラム通り2016年3月に開業しましたが、経営は厳しく2024年度は修繕費が増加したこともあって124億1500万円の営業損失を計上しました。現在建設中の新函館北斗~札幌間(212㎞)は想定外の難工事で、当初2030年度末とされていた開業時期は、数年単位での遅れが予告されます。


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